NOeSIS02-羽化-


クラシックショコラ『NOeSIS02-羽化-』応援中!

(※核心的なネタバレをいろいろ含みます。)

2012年11月に公開されたサークルクラシックショコラによるオリジナル同人ノベルゲーム(iPhone/Android/Windows)。
世界のやり直しを求めた主人公は、どこか違和感のある世界に辿り着き、常軌を逸したヤンデレの女の子に囲まれながら右往左往します。

シナリオのクオリティの高さは相変わらずで、このレベルに類する現代の作品はそう多くないでしょう。この内容を中学生以下の年齢で理解できたなら、その人は将来いい人生を送れると思います。千夜先輩や一夜先輩のドS極まりない人生論や社会論その他の毒舌トークは、本編のもう一つの楽しみであり、胃の痛みや無力感、時には言い知れぬ快楽を呼び起こす可能性があります。前作でもその片鱗は見せていましたが、後半での医療ネタや化学ネタのバックグラウンド知識がガチなものとなっており作者の得意分野で目一杯殴りかかられている様相で、か弱き読者たるわたしはせいぜい涙目でぐぐるのが関の山でございました。

前作からの続きとなる本作で物語は一旦の完結をなしており、前作でみられた謎の多くに対しての回答が示されており、残りの謎については同人版で内容を追えるようになっているようです。次回予告もあり、こちらは第2期のようなとらえ方で待っていればいいのかもしれません。

いいシナリオは読んでいて得るもの勉強になるものがありますので、早送りで読む気にはなれませんね。

(以降はとりとめもない感想と解釈です。ときどき改行するようにします。)
本作の周回要素や命を集めるシステムはファンタジー要素と言わざるを得ないと思いますが、それ以外については現実にありえる内容になっていたと思います。一夜先輩の研究分野は実にタイムリーでしたね。部分が可能なら全体もということですが、直接に成体を作ろうとすると、どうやら"記憶"が問題となるようです(ある人から細胞を取り出しても、その細胞にその人のすべての記憶が入っているわけではないということだと思います)。そのためゾンビのようなものが出来上がってしまい、周囲の者が嘘の記憶を与えたり、様々なコントロールをかけたりすることになり、当のゾンビ本人は死んだ者の脳を食べることで改善を図ったりすることになるわけですが、そんなツクリモノであっても自我を持つことはでき、そこから派生する可能性に一夜先輩は希望を見出していたように思います。

本作の一夜先輩は幽霊であり、作中でも語られている生者にしか認識できないというルールは一貫しています。もっとも、ただ存在しているのではなく、前作では千夜先輩のもう一つの人格となっていたり、本作では時雨に四六時中べったりで恋愛展開まで引き起こしたりとその存在感は絶大です。こちらも作中で語られているように人は2度死ぬのであり、飛行機事故後に千夜先輩や時雨が一夜先輩のことをあっさり忘れていれば、一連の事件は一切起こらなかったでしょうが、生前の一夜先輩と時間を共にしていた千夜先輩や時雨にとっては、それだけ一夜先輩のことが深く記憶されていたということでしょう。また、作中で千夜先輩と憂姫が一夜先輩の声を聞き取る場面がありますが、これらは時雨の思考を読み取ることで間接的に"聞こえた"ということだと思われます。

新登場でおおむね1人に見えた那由多のすさまじい行動力により付近一帯の都市は壊滅的な危機を迎えることになるわけですが、あのあたりの人口がおおよそ100万人くらいいると仮定して、さらに那由多の章にあったように1人あたり1分の命を取得できると仮定すると、一夜先輩は100万分≒694日≒2年復活する見込みだったようです。平均寿命にはほど遠いですが、人類にとって一夜先輩はそれだけの犠牲を払ってでも復活すべき価値があったかどうかについての本作の結論はNOで、そもそも5年前の飛行機事故で一度は否定されていたところです。倫理というものもありますし、カルテブランシェも難色を示す不老不死や蘇生はエビデンスが出るまではいかんともしがたいというのは大多数の意見だと思っています。
ここで問題となるのが時雨で、時雨が飛行機事故から5年間生活を続けていられたのは一夜先輩の延命措置によるものらしいということです。もし1人あたり1分であれば、5年≒263万分で先ほどの仮定以上の人員が必要であり、世間から気付かれないためのゾンビとのすり替えを時雨のためにこれほどの規模で行っていたとすれば、相当なという言葉では足りないほどのヤンデレということになります。実際にはさすがに1分1体ペースではプリンターが追いつかないはずで、憂姫の存在もありますから、もっと小さい規模で補助的な延命であったのだとは思われます。

本作では立ち絵が一新され、イベント絵も多めに用意されています。イベント絵は数クリックで次へ進んでしまうものも多く、なかなかのプレミア感です。音楽も印象的な良い曲が多く、作者が自ら撮影したに違いない背景写真も世界観を引き立てています。開発室の一夜先輩の顔はクリックできるようで、すでにコミカライズで連載されておりアニメ化の確率も高めと思われますが、個人的には実写の劇場版になってほしい気もします。背景写真の印象を引きずっているからかもしれませんが、工場戦とか結構画面映えしそうですし。でも時雨や一夜先輩のオタ知識やら女装要素を考慮すれば、やはりアニメ化なのでしょうか。