隻眼の少女

文藝春秋 麻耶雄嵩

※ネタバレを含みます。ミステリ関連を普段読まない人の感想です。

隻眼の少女雪の日に読むのにぴったりな一冊。寒村の因習というキーワードで思わず手に取りました。
雪や巫女さんのある風景特有の凛とした空気が作中に一貫して存在しております。

読み手に推理する猶予が与えられているのでよいですね。真相が明らかになる場面では読者が初めて知る手がかりというのは出ないべきとは思いますが、だからといって先にすべての手がかりを出してしまうと読者にも推理が可能となり、結果として探偵のカリスマ性が目減りするおそれがあるという諸刃の剣な面もあるから一概にはいえないようです。同様にアリバイのない登場人物が多すぎると、アリバイとは何なのかと思えてきますが、完璧なアリバイがあれば容疑者から除外されてしまうわけで事件解決の易化につながってしまうため、やはりあまり明らかになるべきではないという面があるようです。だからといって誰にでも可能性があるということになってしまうと推理というより総当たりになってしまうので、それっぽい動機の基となる事実は出てきていてほしいというところでしょうか。

読んでいる間は、冬菜存在説で予想してました。古社の先にさらに細い道があるようだったので、てっきりその先で岩倉と潜伏して伝承原理主義者による共犯と相成っていたのではとか思ってました。ただ、そんなこじつけも可能ではあると思います。2部構成で第2部では18年後が描かれるのですが、これがなければシリーズ化という展開もあったのではという気もします。