旧南葵文庫


1902年に紀伊徳川家により開館の私設図書館。
東京の麻布飯倉から2度の移築を経て、現在は熱海伊豆山でその姿を見ることのできる国の登録有形文化財です。
海沿いで優雅に読書するための建物にも見えますが、移転されたのは1987年のことであり、海要素はあくまで後付けです。日本にこうしたデザインの図書館が存在していたのは意外でした。
額縁に飾られている南葵文庫の文字は、徳川慶喜の直筆の複製だとか。文明開化に対応せんが如くのきれいな楷書体です。



明治期前後にこぞって建築された洋館は、戦時中の軍需の時代、高度経済成長によるコンクリートジャングルの時代を経て、建築様式の前線からはとうに追いつけないほど退きました。
大量生産に向かないのは見て取れますが、とはいえもう少し世間に出回っていてほしいものです。