暗黒女子

双葉社 秋吉理香子

(※ネタバレをいろいろ含みます。ミステリ関連を普段読まない人の感想です。)

暗黒女子ある女子高の文学部サークルで闇鍋会が開かれ、メンバーはいつみの死をテーマに自作の作品を次々に朗読します。

多額の資金をかけて造られた西洋建築の文学サロンは、当然ながらその学校の生徒である3年の間しか出入りすることができず、女子高生であるという期間限定の日本独特な女性の人生の煌めきを一層引き立てる舞台装置として大いにその役割を果たしています。

すずらんをキーワードとしたいつみの死を巡り、メンバーは多様な切り口で作品を発表し、共通してラストではいやしくもメンバーの1人を犯人として名指しします。決定的な場面はなかなか描写されないので証拠不十分のふわっとした告発にすぎないにもかかわらず、不思議なことに、事実として納得するに足る内容であれば登場キャラは裏付けを取ることなく事実として受け入れてしまうというあたりに人の習性というものが見てとれますね。次々と新事実が明かされる形式のため読者側に推理の余地は少なくただ先回りの想像ができる程度ですが、連載型エンターテインメントの読み物としてバランスはよくとられていたように思います。

女子高という純度の高い空間が描かれていたからこそ、いつみのリア充設定には裏切りを感じられ異質なものとして見えるのですが、たいていミステリーでは誰かが穢れを引き受けることになるものですから、今回も粛々とそれが行われたとみるべきでしょうか。仮に人気が出ても、3次元でこの空気感を表現するのは難しいでしょうから、メディア展開は2次元でお願いしたい作品です。